あれはそう、刻々とせまる世紀末の恐怖に、まだ世間がそれ程注目していなかった、1997年10月10日体育の日。 ここ島国日本では、みんなが運動会で夢中な頃、邪悪の分身である蘇ったゾンビバンドThe Slut Banksの1stアルバム『 死霊の激愛〜Do or Die〜 』が発売された。 この中に詰っている幅広い音楽性と、過激なロックンロールは一部のファンには歓迎されたが、今一つ全国的には盛り上がりには欠けた。 そこで行われた悪だくみツアーVol.5は、全国各地を回り、そして自らデザインをしたTシャツを売り、その売り上げを足代にしてツアーをする。(イラスト@参照) という悪だくみというよりは、涙なしでは語りきれない苦労で全国各地を回ったのである。 そのかいあってか1998年1月29日に行われた新宿リキッドルームのライブでは、 本人達もビックリの満員御礼の観客でフロアは埋め尽くされた。 愛と欲望そして暴力の渦巻く街、新宿は歌舞伎町にピッタリのロックンロールショーだった。 これは現在でも語りつがれ、伝説となっている。 ちなみに当時の模様は『 死霊のロックンロール 』なるタイトルで、すでにビデオ化されているので機会があれば是非入手されたし。 しかし、彼らは考え始めた。 なんかちがうんじゃねぇかと。 そう現世の人間達に、愛を与えすぎているということに。 そこで出た答えが、5月1日に発売したマキシシングル『 PIKA-BANG 』だった。(イラストA参照) このシングルで彼等は、スゲー轟音で速いけどポップな曲調、一発撮りの荒々しいロックンロール、そして涙の出そうなメロディーなのにドひずみのノイズの嵐。 常に「ざまぁみろ人間共よ」という姿勢を崩さなかった。 そんな音にやられ、瞳の色が確実に変化する。 これに気付かないゾンビ化された人間達で悪だくみツアーVol.6も大成功した。 ウキウキ気分のThe Slut Banksのメンバー達も墓場から蘇って約2年。 現代の生活にも慣れ始めたのだ。 特に気に入ったのはテレビだった。 そう、そうなのだ。 「あれっ俺達テレビに出てない。テレビに出たことないと人気者じゃねぇんじゃねぇか」という田舎のおばはんみたいな事を考え始めた。 そこで、出た結論がそう「こんな狭い島国日本は、俺様達のセンスが分かるはずねぇや」と考え、あの世では後輩であり、生きていた時はかなりのカリスマ大スターだったという、ダチのカートコバーンなる者に相談した。 そしたらカートが「俺も一緒に仕事をしたことがあるスティーブ・アルビニなる人物がアメリカのシカゴにいる。そいつはいいぜ。紹介するぜ。ついでに俺の故郷であるシアトルでLIVEもして来い。」(イラストB参照) そして実現したのが、シカゴレコーディング。 そして世界ゾンビ化計画Vol.1(ワールドツアー、それもたった1本)が行われた。 シアトルのライブは、きれーな青い目のねーちゃんや、地元のメタル小僧、そして完全にいっちゃってるおっちゃんなど、幅広いアメリカ人達に熱狂的に受け入れられる。 そして9月21日には『 I'll go around 』が発売される。 オルタナ番長のアルビニさんプロデュースのせいもあり、ゴリゴリのサウンドは完全に日本のバンドには聴こえなかった。 にもかかわらず、日本でしか発売されず、あわれっ・・・。 それに伴い、いよいよ日本ゾンビ化計画Vol.1なるツアータイトルに変わり、全国を回る。 そして11月13日の金曜日、お日柄もいい頃、本人達も周りも客こねーから無理だろ。 でも見栄をはっとこう。 ということでハッタリだけでやるはずの赤坂ブリッツのライブ。 ところが満員の客にビックリ。 それだけでゾンビ化が進んでいる証拠だった。 その後、2枚目のアルバムのレコーディングに入る。 確固たる信念と決断力、能書き無用、御意見無用のコンセプトでなんと普通じゃ考えられない 15曲を10日間でレコーディングし終える。 タイトルは『死霊光線 』。 そう彼等は、世間がもっとも恐れていた熱光線・Evil Beamを手にしてしまったのだ。(イラストC参照) それにより地獄耳であるEvil Earに続き、手にしてしまったこの必殺技を武器に、 日本ゾンビ化計画Vol.2が進行するのは、もはや避けられそうもない。 そしてEvil Wingなる邪悪な翼を手にして、世界中を駆け巡るのも時間の問題であろう。 以前、ノストラダムスなる人物が言っていたそうな。 1999年、恐怖の大魔王が空から降りてくると。 それってもしかしたら・・・The Slut Bnaksのことか、それともその大王に立ち向かい地球を救うのがThe Slut Bnaksなのか。 答はあと数ヶ月後にでるであろう。 最後に忠告しておこう。 The Slut Bnaksとは終末思想を掲げ、人間をゾンビにしてしまうカルト集団なのか・・・。 それとも恐ろしいほどの破壊兵器や、武器などをどんどん手にしてゆくテロ集団なのか・・・。 いずれにしろ地球上で現在最も危険な集団であることには間違いない。
1999.5 ロクfより抜粋
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