s t o r y # 0 1


THE SLUT BNAKS結成秘話





 1950年代中期、アメリカ東部のある街にエルビス・プレスリーに憧れた15才〜16才の少年がいた。
 彼はロックン・ロールに夢中になり、仲間を集めてバンドをすることが夢だった。
 その見事なダックテイルのリーゼントから、仲間内ではあだ名でDUCK-と呼ばれ、  その辺りじゃちったぁ知れ渡った少年だった。
 しかし不幸というものは突然襲うもので、彼の仲間の女関係からチーム同志の対立が起こり、 その中で彼は刺されてこの世からオサラバするのであった。
 ロックン・ロール・スターを夢見ていた…
 1957年のことだった。


 ・・・それから40年の月日が流れ、1996年7月頃の夜。
 ロックン・ロールの夢が叶わなかった少年の眠るポマード墓地から、突然彼は蘇ったのであった!
 そう、現代の音楽業界が恐怖でビビりまくる"Regent Evil=DUCK-T "の誕生であった。
 もちろん彼は、叶わなかった夢のロック・スターになるために現世に蘇生したのである。
 まず彼はバンドを組もうとしたが、そのルックスから現世の人間には恐れられてなかなかメンバーが集まらなかった。
 そこで、あの世で気のあったフランス貴族の出身でナポレオンの専属鼓笛隊をやっていたという " Smokin' Star "なる人物を墓場から蘇らせた。
 フランス人なのに、なぜ英国人のような名前なのかはこの際伏せておこう。
 そしてSmokin' Starの紹介で、日本に敏腕のギター弾きがいることを知る。
 彼は帝国音楽大学を首席で卒業し、あの滝廉太郎が、名曲「荒城の月」の作曲の際にギター伴奏を依頼されたという。
 そいつも墓場から蘇らせたのだが、墓場から掘り起こしてびっくり!!
 彼は火葬だったので、ゾンビでなかったのだ。
 でもガイコツが流行ってるからいいか・・・ということで、仲間に入れることになる。
 彼こそが" Dr. Skelton "である。
 そしてシンガーを探すことになり3人で下北沢で呑んでいるとき、  駅前(ちなみに小田急線側出口)でギター片手に歌を歌っている半死状態の男と出会う。
 街を行く人々は彼の歌に耳を傾けることはなかった。
 だが3人は、彼の声にとてつもない可能性を感じ、彼" TUSK "を半死状態から完全に蘇らせ、この現世の音楽業界を圧制するのだと仲間に引きずり込んだのだ。


 こうしてゾンビ音楽集団は誕生した。
 しかし彼等が土の中で眠っていた何十年の間の音楽の移り変わり/ジャンルの多様化には彼等も戸惑うばかり。
 街にはパンク・レゲエ・スカ・ボサノバなど様々な音楽の洪水。
 得意のロックン・ロールだけでは、現在の音楽シーンに太刀打ちできないことに気づいた。
 そこで、ともかく何でもやってしまえということで色々なジャンルの音に挑戦し始めたのだ。
 そして今、ロックン・ロール・スターになれないままにこの世を去って行ったゾンビ軍団の執念が、 何十年もの歳月を経た現代で始動し始めるのだ。


 1996年9月20日に新宿ロフトで行われた1st Liveは、彼等を観に来た人間は少なかったが、霊で会場は一杯だった。
 もちろんあの世からジミ・ヘンドリックスやジム・モリソンなども応援に駆けつけたのは言うまでもない。






1997.7 ロクfより抜粋