青紙バージョン


 


ちょっとだけ変形バージョン

日付 : 2003年

[ For whom Are Teeth Pulled ? TOUR ]


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初めてスズキというギタリストを目にしたのは90年、今から12〜3年以上も前にさかのぼる。ブラックの短パンにアディダスのソックスとブラックスニーカーをトレードマークにしていた。当時のスラッシャーは、革ジャンに黒スリムのVANSのハイカットのスケートシューズやナイキのゴツいスニーカーを身につけるのが流行だったので、ずいぶんスポーティーでスタイリッシュに見えたのを憶えている。髪の毛を扇風機のように振り回し、超絶なクランチリフを鬼のように刻みながら、ステージ上で派手にモッシュしていた。当時東京のシーンでもっともアグレッシブなステージングをしていたのがスズキ率いるLAWSHEDだった。結成してわずか1年そこそこでありながら、その過激なパフォーマンスで動員をのばし、アルバム未発表であるにもかかわらず全国区にその名を轟かせたのであった。当時のライブハウスシーンではビジュアルとこのスラッシュ系のバンドがその人気を2分していたが、今のようにインターネットや彼らを取り上げるような雑誌がない時代では、考えられない浸透度だった。しかし、初の全国ツアーを終えレコーディング直前になって、スズキはこのバンドに見切りをつけるかのように脱退してしまう。その後スラッシュメタルのムーブメントも沈静化し、R.H.C.Pを筆頭とするミクスチャー勢がトレンドとして浮上すると、日本国内でいち早くそれに呼応するかのように現れたのは、TAKE-SHITとスズキの合流により産まれたCOCOBATだった。それはチョッパーベースとスラッシュギターの融合という、単なるミクスチャー路線から脱却した彼らなりのオリジナルスタイルだった。実は現在でもそのスタイルを巧みに取り入れ継承しているバンドは他にない。当時いくつかのメタル系のバンドがそういったスタイルを実験的に取り入れたが、確立まで至ったのは世界的にみても彼ら以外には心当たりがない。どのバンドもただのミクスチャーバンドの粋から脱却できずに終わってしまったか、中途半端なメタルバンドのまま終わってしまった。スラッシュギターとチョッパーベースの融合を果たしたスズキが、次に狙ったのが今のPULLING TEETHのスタイルに他ならない。COCOBAT脱退後に彼が作ったGRUBBYでもウッドベースを早い時期から実験的に取り入れ、積極的に新しいリズムパターンを導入しようとしていた事からも推測できる。スラップベースとスラッシュギターの融合、これが彼の考えるサウンド形態の到着点なのだ。確かに初期のPULLING TEETHではウッドベースは取り入れてない。というのもこの時期スズキはボーカリストとして自己のスタイルを確立する事が優先事項だったからに他ならない。吐き捨てるようなショートレンジの独特のボーカルスタイル、メロディーではなくインパクト重視した楽器のような存在ではあるが、ライブ会場では誰もが一緒に歌ってしまう。そんなスタイルを確立するのにさほど時間はかからなかった。これがスズキというミュージシャンの非凡なセンスであるということは言うまでもない。

2001年に発表された「MTJ」からタイジがスラッピングを多用するようになったが、やはりそれはまだスズキが思い浮かぶリズムパターンには程遠いものだった。ライブでは慌しいだけで、ノリが雑なものになってしまうこともしばしばだった。幾度となくアレンジに手を加えたり、タイジも自分のプレイを幾度となく検証したりもした。しかし、答えは意外な所に潜んでいたのだ。彼らのサウンドに転機が訪れたのは3人目のドラマー、三浦智也が加入した瞬間だった。智也は確実にジャストポイントを捕らえつつ、絶妙なスピード感をアジャストできる数少ないドラマーだった。今までのドラマーはどちらかというと突進型の「剛」をよしとするスタイルだったのだが、それがタイジのスラッピングを殺していたのだ。智也は微妙なスピード感を巧みにコントロールできる「柔」なスタイルの持ち主で、これがタイジのスラッピングを引き立てる事に成功したのだった。それを証拠に、彼らのメジャー第一弾アルバムとなったセルフカバーアルバム「Teeth Shells..., But Who's Pulling?」では、前任のドラマーでレコーディングしてあったトラックに、智也のドラムを録せ替えただけで、まるで別のバンドのプレイのようにスラッピングが活きてきたのである。ついにスズキの探し求めていたパズルの最後のピースが揃ったのだ。

そして、このメンバーで挑んだのが今回のアルバム「FOR WHOM ARE TEETH PULLED?」だ。

このアルバムは今まで彼らのフィールドであったハードコア、メタル、ラウドミュージックファンはもちろん、サイコビリーから果てはプログレファンからもリアクションを得られるような作品に仕上がっている。テクニカルかつアグレッシブ、そして以前にましてスピーディーに、そして今まで以上にポップに覚えやすいメロディーも揃っている。スズキの理想に一歩近づいたPULLING TEETHは、早くも独走態勢に入ったといっても過言ではない。メタリックかつスラッシーなギターのリフにスラッピングリズムを擁したスラップメタルサウンドが遂に完成したのだ!世界に類をみないこのオリジナルサウンドの完成形はどこまで発展するのであろうか。METAL SLAPPING MAD!それが新しいPULLING TEETHが一つのロックのスタイルを築き上げつつある。少なくとも一つの方向性は打ち出した。このアルバムを聴いて「やられた」と思うミュージシャンがどれぐらいいるか、考えただけでワクワクする。PULLING TEETHは今もっともスタイリッシュなバンドへと進化を遂げた!

『ジャパン・プリングティース新党代表者が語る。』






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